《広東語》(初級88) 数字の曖昧な表現方法 その①
- 2017/9/19
- 広東語(Cantonese), 文法, 初級
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今回は少し曖昧な数字の表現方法について学んでいきたいと思います。
目次
今回学ぶ数字の表現方法
以前「(初級03)数字の数え方を学ぼう」や「(初級05)物を数える方法(基本的な量詞)」にて数字や物を数える方法を学びました。この時はその数字ぴったりの表現のみを学習しましたが、今回は少し曖昧な述べ方だったり、範囲での述べ方を学習していきたいと思います。
まずは今回学習する言葉を以下の表にまとめたいと思います。
日本語 |
広東語 | 広東語読み |
---|---|---|
幾~ | gei2 | いくらか~ |
零~ | ling4 | いくらか~ |
~左右 | jo2 yau6/jo2 yau2 | ~くらい |
[数字] + [その次の数字] | – | (例)「二三(意味:2~3)」、「三四(意味:3~4)」、「七八(意味:7~8)」など |
大約~ | daai6 yeuk3 | 大体~ |
差唔多~ | cha1 m4 do1 | ほぼ~ |
~起 | hei2 | ~から |
ちょっと覚える量が多いかもしれませんが、今回は上記の7つの単語を学習していきます。また今回は曖昧に大体の数字を述べる表現となり、個人の感覚によって多少差があります。
例文を見ながら覚えていくほうが早いので早速例文を見ていきましょう。説明が必要な部分は例文中にお話ししていきたいと思います。
幾~:いくらか
「幾」は”いくつかの”、”数個”というように複数ある場合の表現をするときに使います。以前「(初級21)「幾」/「幾多」 を使って量を尋ねる」にて「幾」は”いくつか?”という質問するときに使う疑問詞として紹介しました。しかし、今回学習するように、疑問文ではなく、複数の数を表すときも同じ「幾」を使うため、どちらの意味かは会話内容から判断する必要があります。
それではどんな使い方をするのか以下の表に例を記載したいと思います。
広東語 | 読み | 日本語 |
---|---|---|
幾蚊 | gei2 man1 | 数ドル |
幾十蚊 | gei2 sap6 man1 | 数十ドル |
十幾蚊 | sap6 gei2 man1 | 十数ドル |
幾個人 | gei2 go3 yan4 | 数人 |
幾日 | gei2 yat6 | 数日 |
幾個鐘頭 | gei2 go3 jung1 tau4 | 数時間 |
この「幾」は大体2~5(場合によっては1~5)程度の範囲を表します。そのため上記表の日本語訳としては2~4程度を表す”数 + [単位]”を使っていますが、広東語の「幾」のほうが表す範囲はやや広くなります。以下例文となります。
補足ですが、上記例文の「五百幾十蚊」は十の単位を省略して「五百幾蚊」ということもあります。意味は同じです。
零~:いくらか
これは2つの使い方があり、金額と期間(時間)の表現によく使われます。特に金額を述べるときに使う機会が多くなります。
金額を表す場合
金額を表現するときによく使わるので、まずは金額だけを勉強していきたいと思います。例を以下の表にあげたいと思います。
広東語 | 読み | 日本語 |
---|---|---|
十零蚊 | sap6 ling4 man1 | 十数ドル (11~15) |
二十零蚊 | yi6 sap6 ling4 man1 | 二十数ドル (21~25) |
百零蚊 | baak3 ling4 man1 | 百数十ドル (110~150) |
百零二十蚊 | baak3 ling4 yi6 sap6 man1 | 百二十数ドル (121~125) |
二百零蚊 | yi6 baak3 ling4 man1 | 二百数十ドル (210~250) |
五百零蚊 | ng5 baak3 ling4 man1 | 五百数十ドル (510~550) |
千零蚊 | chin1 ling4 man1 | 千数百ドル (1100~1500) |
千零四百蚊 | chin1 ling4 sei3 baak3 man1 | 千四百数十ドル (1400~1450) |
二千三百零蚊 | yi6 chin1 saam1 baak3 ling4 man1 | 二千三百数十ドル (2300~2350) |
実は金額を曖昧に表すときに使うこの「零」は「幾」と意味は同じになります。ただ少し使い方が「幾」とは異なり、以下の特徴があります。
・最上位の単位に対して使うことができない。(そのため「幾蚊」や「幾十蚊」は「零」を使って表現できません。)
・100等最上位の単位が1の場合は「一」を省略する。
曖昧な表現になるのは「零」の直後の単位が対象になります。例えば「十零蚊」の場合は一の位が曖昧な表現となります。
また、100を超えると「零」の表す範囲が人によっては広くなる場合があります。例えば「百零蚊」は基本的に110~150程度を表しています。ただ110~200未満の範囲としても捉えても問題ないのが実情で、かなり曖昧な意味になります。ちなみにこれは「幾」も同じです。
期間を表す場合
次に「零」を使って期間を表す場合の表現についてです。
広東語 | 読み | 日本語 |
---|---|---|
十零秒 | sap6 ling4 miu5 | 十数秒(11~15) |
四十零分鐘 | sei3 sap6 ling4 fan1 jung1 | 四十数分(41~45) |
十零個鐘頭 | sap6 ling4 go3 jung1 tau4 | 十数時間(11~15) |
二十零日 | sap6 ling4 yat6 | 二十数日(21~25) |
十零個星期 | sap6 ling4 go3 sing1 kei4 | 十数週間(11~15) |
十零個月 | sap6 ling4 go3 yut6 | 十数か月 |
上記の表を見て頂くとおわかりになると思いますが、「[数値] + 零 + 秒/分鐘/個鐘頭/日/個星期/個月」という形を取ります。
ここまではそう難しくはないのですが、以下の表のように「鐘頭」/「月」と「年」は少し変わった使い方もします。
広東語 | 読み | 日本語 |
---|---|---|
個零鐘頭 | go3 ling4 jung1 tau4 | 1時間~1時間15分 |
三個零月 | saam1 go3 ling4 yut6 | 3ヶ月~3ヶ月半 |
一年零 | yat1 nin4 ling2 | 1年~1年2ヶ月 |
兩年零 | leung5 nin4 ling2 | 2年~2年2ヶ月 |
・「鐘頭」の場合
「[数値] + 個 + 零 + 鐘頭/」という形で使います。これはその時間に”プラス0~15分程度”という意味になります。そのため上記表の「個零鐘頭」は”1時間~1時間15分程度”を表すことになります。また、「一」は省略せず「一個零鐘頭」としても構いません。
・「月」の場合
「[数値] + 個 + 零 + 月」という形で使います。これはその月に”プラス0~15日程度”という意味になります。「個零月」や「一個零月」とすると”1ヶ月~1ヶ月15日程度”を表します。
・「年」の場合
「[数値] + 年 + 零」という形で使います。「零」の発音が第4声から第2声に変化することに注意してください。この時は大体その時間に”プラス0~2ヶ月程度”という意味になります。
以下例文になります。
この「半個鍾頭零十分」は「半個鍾頭(意味:30分)」と「十分(意味:10分)」を足した値になるので40分程度となります。
金額・期間以外を表す場合
次にお金と期間以外の場合についての「零」の使い方を見ていきましょう。
広東語 | 読み | 日本語 |
---|---|---|
二十零個 | yi6 sap6 ling4 go3 | 二十数個(21~25) |
四十零件 | sei3 sap6 ling4 gin6 | 四十数個(41~45) |
百零張 | baak3 ling4 jeung1 | 百数十枚(110~150) |
三百五十零盒 | saam1 baak3 ng5 sap6 ling4 hap6 | 三百五十数箱(351~355) |
五百零份 | ng5 baak3 ling4 fan6 | 五百数十件(510~550) |
使い方は「[数値] + 零 + [量詞]」となります。こちらも最上位の位に対して使うことができないため、最上位以外の位に使うことになります。以下に例文を記載したいと思います。
※見到(gin3 dou2):[動詞] 見える。見えた。
~左右:~程度
この「左右」は”~程度”、”~くらい”、”~前後”という意味になります。「[数字] + [単位] + 左右」、もしくは「[数字] + 左右」と「左右」の前に数字と単位を述べます。また「jo2 yau6」と「jo2 yau2」の二通りの発音があります。どちらを使っても構いません。こちらはよく使う言葉ですので覚えましょう。「左右」を使った例文を以下に挙げたいと思います。
[数字] + [その次の数字]:「二三」、「三四」、「七八」など
これはタイトルがわかりにくいのですが、日本語でいう”二~三個”や”四~五回”といった数値を少し曖昧に表すときの広東語版です。使い方も日本語と同じで「[数字] + [その次の数字] + [単位]」という形で使用します。
広東語 | 読み | 日本語 |
---|---|---|
兩三次 | leung5 saam1 chi3 | 2,3回 |
三四十年 | saam1 sei3 sap6 nin4 | 3,40年 |
九十分鐘 | gau2 sap6 fan1 jung1 | 9,10分 |
四五十蚊 | sei3 ng5 sap6 man1 | 4,50ドル |
五六個 | ng5 luk6 go3 | 5,6人 |
四五本 | sei3 ng5 bun2 | 4,5冊(の本) |
日本語と少し違うところは日本では1~9の数字を使いますが、広東語は10という数字もこの表現で使うことができるため、上記表の「九十分鐘」という述べ方も存在します。意味は”9~10分”というものと、”90分”という意味の2つに解釈できてしまうのですが、どちらの意味かは前後の会話の内容で判断する必要があります。以下例文となります。
大約~:大体~
「大約(daai6 yeuk3)」は”大体~”、”大まかに~”という意味になります。以下の表にどのように使うか例をあげていきたいと思います。
広東語 | 読み | 日本語 |
---|---|---|
大約三百蚊 | daai6 yeuk3 saam1 baak3 man1 | 約300ドル |
大約十部電話 | daai6 yeuk3 sap6 bou6 din6 wa2 | 約10機の電話 |
大約十種顏色 | daai6 yeuk3 sap6 jung2 ngaan4 sik1 | 約10色の色 |
大約二十秒 | daai6 yeuk3 yi6 sap6 miu5 | 約20秒 |
大約八KG | daai6 yeuk3 baat3 kei1 ji1 | 約8kg |
大約五十cm | daai6 yeuk3 ng5 sap6 si1 em1 | 約10cm |
「大約 + [数値] + [単位]」という形式で述べるだけなので特に難しくはありません。また単位は省略される場合があります。以下は例文となります。
差唔多~:ほぼ~
「差唔多(cha1 m4 do1)」は”ほぼ~”、”ほとんど~”という意味になります。以下の表のように使います。
広東語 | 読み | 日本語 |
---|---|---|
差唔多兩點 | cha1 m4 do1 leung5 dim2 | ほぼ2時 |
差唔多一個鐘頭 | cha1 m4 do1 yat1 go3 jung1 tau4 | ほぼ一時間 |
差唔多一千蚊 | cha1 m4 do1 yat1 chin1 man1 | ほぼ1000ドル |
差唔多一年 | cha1 m4 do1 yat1 nin4 | ほぼ1年 |
差唔多三十分鐘 | cha1 m4 do1 saam1 sap6 fan1 jung1 | ほぼ30分 |
差唔多一個月 | cha1 m4 do1 yat1 go3 yut6 | ほぼ1ヵ月 |
ぴったりではないですが、その数値に”ほとんど”、”ほぼ”近い状態の場合に使います。以下例文となります。
この「差唔多」という単語は、非常に使いやすい言葉で、ここで紹介した以外でも様々な場面で使われます。これについては今後「初中級」シリーズで紹介していきたいと思っています。
~起:~から
この「起(hei2)」の意味は”~から”という意味で、対象の数字を起点として始まっている意味を表します。
広東語 | 読み | 日本語 |
---|---|---|
二百三十蚊起 | yi6 baak3 saam1 sap6 man1 hei2 | 230ドルから |
一折起 | yat1 jit3 hei2 | (最大)90%オフから |
一百蚊起 | yat1 baak3 man1 hei2 | 100ドルから |
兩件起 | leung5 gin6 hei2 | 2個から |
四位起 | sei3 wai2 hei2 | 4人から |
兩歲起 | leung5 seui3 hei2 | 2歳から |
「[数値] + 折 + 起」や「[数値] + 蚊 + 起」などセール時の割引や商品価格の宣伝で使われることが多いです。以下に例をあげたいと思います。
「759」はここ数年で店舗を増やしているお菓子屋さんで、よくセールをやっています。日本から輸入した食べ物・お菓子を主に取り扱っていて他の店に比べて比較て安いです。日本人に馴染みの有名メーカーの商品が売ってるので香港に住む日本人にとっては非常に助かるお店となります。ただ、お菓子は日本で売れ残ったであろう人気のなさそうな限定味の物もよくあります。。。(笑)。正式には「759阿信屋(chat1 ng5 gau2 a3 seung3 uk1)」といいます。
また、以下は香港のお店の実際のセールの張り紙の写真なのですが、「起」が使われています。
この写真にある「低至(dai1 ji3)」は”一番低い値で”という意味で、「半價(bun3)」は半額という意味です。
[おまけ]:前後:~前後
最後におまけとして”~前後”と述べる場合を紹介します。広東語でも日本語と同じ「前後(chin4 hau6)」を使います。例を以下に記載します。
広東語 | 読み | 日本語 |
---|---|---|
前後三十分鐘 | chin4 hau6 saam1 sap6 fan1 jung1 | 30分前後 |
前後兩年 | chin4 hau6 leung5 nin4 | 2年前後 |
前後八kg | chin4 hau6 baat3 kei ji1 | 8kg前後 |
九七前後 | gau2 chat1 chin4 hau6 | 1997年前後 |
前後四日 | chin4 hau6 sei3 yat6 | 4日前後 |
前後五個人 | chin4 hau6 ng5 go3 yan4 | 5人前後 |
上記表の中で「九七前後」は少しだけ特殊な言い方で、1997年前後を表します。1997年は香港がイギリスから中国に返還された年であるため、この年の前後を表す言葉として使われています。他の年では話者同士お互いがちゃんと認識しているばこのように「[数字] + 前後」を使って西暦を表すことができます。
今回はよく使うものだけを紹介させて頂きましたが、数字の曖昧な表現方法は他にもたくさんあるので初中級で第二弾を予定しています。
今回もお読み頂きありがとうございました。
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